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樹の気持ち [日々のキルト]

この家は丘の上のマンションの8階なので、ベランダも地上よりはるか上にある。ベラン
ダから下を見ると、都会の中ながら、ちょっとした木々の茂みが青々としていて、緑の小さ
な森みたいだ。
ところで、今日、書斎のわきのベランダに置いていた鉢植えの通称「ジャックの豆の樹」に
油蝉が一匹とまってやかましく!鳴きたてているのを発見。蝉の声というのは近くで聞く
と、もう耳がおかしくなるくらいやかましい。耳を聾するとはこのことだと思う。
すぐ下にはあんなに豊かに木が茂っているのに、何もこんなにひょろひょろとした鉢植え
の若木にやってきて、縄張り宣言をしなくても…などと思うのだが、蝉の気持ちは今ひと
つ分からない。
何年か前、10センチばかりだった苗を買ってきておもしろがっていたら、たちまち野放図
に伸びて、いまや天井に梢がとどきかけ、何度も若枝を切ってしまったのに、樹はへこた
れない。それにしても蝉が止まったのは、初体験に違いない!私の耳にはジンジンうる
さいが、樹にとってはこれはどんなふうに聴こえるのだろう?波動が樹液を波立たせる
のかな…などと思う。蝉のとまる樹と、蝉のとまらない樹というのはあるのかしら、など。
いつかバルコニーに置いた鉢植えのかんきつ類の樹でアゲハチョウの卵が孵って、
羽化して飛び立つのを見送ったときも、私はやはりその樹に一目おいたものだった。
なにしろ樹はこういうことを淡々とやってのけて、知らんぷりして立っているのだから。

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