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真夜中の庭 その他 [日々のキルト]

今日は、最近読んだばかりの本の紹介です。

 数日前に朝日新聞の広告で『真夜中の庭』ー物語にひそむ建築ー(みすず書房)というのを発見した。その後偶然横浜ランドマークの本屋さんの棚にこの本をみつけてぱらぱら見ているうちに、どうしてもほしくなって買ってしまった!
 だがこれは収穫だった。さっそくその夜、読みだしたら、面白くて止まらないままに、あっという間に最後まで読み終えてしまった。
 取り上げられているのは「ナルニア国ものがたり」「ムギと王さま」「アッシャー家の崩壊」「木のぼり男爵」「ゲド戦記」「グリーン・ノウ物語」「クマのプーさん」、もちろん「トムは真夜中の庭で」「ムーミン童話全集」も!その他たくさんあるがここでは、略します。

 著者植田実さんは建築関係の仕事がメインの方らしく、一貫してこれらの物語を
建築空間というか、家というスペースとかかわる空間的認識の中で語っておられるので、そのせいもあってか、自分が何回も読んだはずの物語が、いまや異なる角度からの光をあてられた別の物語性をもって、生まれなおしたようで、(またまだ読んでいない本もいくつも取り上げられているので)新しい本の贈り物を再度手にしたわくわく気分をプレゼントされた。ファンタジーや童話、幻想小説などの好きな方には特にお勧めです。

 次に週刊ブックレビューの児玉清さんが遺された二冊の本。集英社文庫の「負けるのは美しく」と新潮文庫の「寝ても覚めても本の虫」。私は「負けるのは美しく」を読んだばかりだが、これはほんとにおもしろく、ページをめくるのももどかしく読み進めたといってもいいくらいだ。読書家の児玉さんの文章力にも初めて触れることができた。同時に彼の役者としてのあり方(それは彼の人となりをそれとなくうかがわせるもの)や、人生のさまざまのつらい経験、九死に一生の思いがけない経験などを、ユーモアあふれる文章で描いていて、彼のファンならばだれもがひきつけられるものと思います。(たとえファンならずとも…。)あと一冊の「寝ても覚めても本の虫」が残っているので、これも楽しみです。
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続き(2) [詩作品]

最後に受賞の日のパンフレットに紹介された自分の作品も載せます。『ユニコーンの夜に』からです。
   
          なぜ

      小さな言葉のはしきれが
      どこかに
      こぼれ落ちているが
      その場所が見あたらない
      夜明け前の暗さのなか
      出来事だけが   
      ゆめのなかでのように
      通り過ぎる
       …さっき傘をさして
       黄色い花の森をさまよっていた
       あのうしろすがたはだれ…
      読み残したものがたりが
      どこかでまだ続いているらしい
      枕もとで
      羊歯色の表紙が
      夜ごとめくられていくのも
      そのせいだ
      電車の棚に置き忘れられた
      赤い傘の上に
      雨が降りしきるのも
      そのせいだ
       …いつだったか
       あの傘を
       太陽のように
       くるくる回していたのはだれ…
      もうひらかれることのない
      傘の骨が
      網棚できしんでいる


      遠ざかるプラットホームで
      くろい犬が鼻をあげ
      どこまでも…わたしを
      追ってくる日々 


”””””””””””””””””””””””””””””””””

以上で小野市詩歌文学賞受賞報告を終えます。

詩とは何か、と考えてもなかなか答えは出てくれません。受賞の際にいただいた辻井喬氏のこの詩集への講評に「人生への開き直り」ということばがあって、その意味を今後への一つの問いとして受け止めています。

 そんなことを想いながら昨日横浜美術館で、長谷川潔展を見ました。現実の土壌に根を下ろしながら、完璧な異世界にそれを移植し、深い宇宙性をもつ作品へとそれを昇華した長谷川潔の仕事。特に風に種子を飛ばす雑草たちの毅然とした美しさがいつまでも消えません。
  
””””””””””””””””””””””””””””””””””””

       すべての芸術家は、多かれ少なかれ「神秘」を表そうとするものだ。               ただ、ありきたりの手段によってではなくそれを表そうとする。現
       代の画家の中には、対象をぼんやりと眺め、それをデフォルメさせ
       るにとどまる人が多い。しかし私は、一木一草をできるだけこまか
       く観察し、その感官を測り、その内部に投入する手段をもとめる。
       できるだけ厳しく描いて一木一草の「神」を表したいがゆえに。
       現代は,神性の観念よりはいって絵にいたる。私は,物よりはいっ
       てその神にいたる。

        東洋の思想と西洋の技法の結晶   長谷川 潔より
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