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文芸コンクール [詩作品]

 今年は、第37回神奈川新聞文芸コンクールの現代詩部門の選考をさせていただいた。今年は暑い夏だったが、さらに熱い多くの方々の表現への意欲となまの声に触れることができたのは新鮮な経験だった。もう紙上にも発表されたので、ここに第一席の入賞作を載せてみたいと思う。


                   ヒマワリ                                                    志村正之


              朝の輝きで一杯に盛り上がっている海を
             
             両手ですくい挙げて顔を洗った。


              
              指の隙間から光の雫が

             バシャバシャと溢れ落ちていく。

              

                あの山のイノシシの鼻に

               大きな工場の煙突の中に

               僕が過ごした小学校の

               グランドに引いた白線の上に


               
               川から飛び出した岩の端っこに

               八百屋や魚屋や

               干からびた田んぼやみかん畑に



               
               小さな駅のレールの上に

               鉄屑の山に乗っかった

               ステレオの回転盤に

               新しく出来た

               道路とマンションのコンクリートに


             
             そして、昨日君が撒いた

               小さな花壇の

               ヒマワリの種の上にも。


          ※              ※



 この詩を読むと、生きてるってすてきなことだなあ…と全身に感じます。あたりがザワザワしてきます。習慣的に繰り返している平凡な行為やしぐさも、想像力を生かすと、とんでもない豊かな広がりと奥行きをもっているんだなあ…と。
読んで幸せになる作品でした。作者は陶芸家とのこと。いつも五感で直接モノに触れている方なんですね。  
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青リンゴ

溢れ落ちた光がとらえたもの、その切り取り方に、作者の姿勢が息づいている、本当に気分を前向きに幸せにしてくれる作品でした。これは詩にわたしが求める大切な要素のひとつなので、嬉しくなりました。
by 青リンゴ (2007-10-21 09:22) 

ruri

近頃こういう詩はなかなか読めませんね。
手放しで、生きていることの幸福感を感じさせてくれるような作品は。
光と闇。いつもその境界をさまよっている気がしますので、一読、ああ、いいなあと思ってしまいました。
by ruri (2007-10-23 18:19) 

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